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「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

「テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い」編
第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

第一回「これ、何?」

(遥かな道、テナー街道)
 私とジャズの出会いは偶然でも必然でもなく「当然」でした。

父が元ジャズドラマー。

 父は大正8年生まれで尋常小学校卒業?(したのかなあ?)と同時に「太鼓」
(今だに父はそう言う)を叩いたと。但し、進駐軍キャンプが主な仕事場だった為に
撤収と同時に失職、止む無く芸能社(今で言うプロダクション)を営んだらしい。

 ですから私自身、物ごころついた時には家の中にはジャズといういかがわしい
音楽が蔓延しておりました。

ベニーグッドマン、グレンミラー、トミードーシー、廣澤寅蔵、ジーンクルーパー、
ハリージェームス、初代桂春団冶、テディーウイルソン、チャーリーベンチュラー、
フィリップフィリップス、JATP、エンタツアチャコ、ノーマングランツ、ベンウエブスター、
レスターヤング、レオンチューベリー、中田ダイマルラケット、コールマンホーキンス、
京山幸枝若…等々?

 そういう呪われた家に育ったので今では立派な漫才師?ちがうちがう!
というわけで、ジャズといものは殆ど3度の食事と同じ位置でありました。

「さあ!ごはんですよ!今日はあなたの好きな
ライオネルハンプトンカレーとジョニーホッジスの味噌漬け」

そんなことあるわけがない!

 今、人に話すと「羨ましい」とか「恵まれた環境」などと無責任なお答えが
返ってきますが、当人にとっては変な音楽、というよりもむしろ当たり前の音。

恥ずかしかったですなあ。中学時代友人たちのアイドル、ビートルズやクイーン、
レッドツェッぺリンなどの話題についていけなくて、できるだけ音楽の話題から
遠ざかろうとしておりました。ですから、吹奏楽部などという高貴な音楽集団には
属さず、“3K”くさい、きたない、きびしいの代表格、剣道部に入部し日々素振りと
床掃除に明け暮れる毎日。

時折、コラムやBBSで書いていますように、「体育会系ジャズミュージシャン」という
性格がこの時点で養われたのであります。今思えば、この剣道というスポーツが
どれほどサックスを演奏する上で、あるいは生徒さんに教える上で役に
立っていることか。人間、なんでもやっておくものです。

 たとえば、腹式呼吸。こんなものはなかなか教えにくいもの。

「はい、胸を使わず腹で呼吸をして〜」

「先生、おなかに肺があるのでしょうか?」

「いや、そんな感じでという話ね。では息を吐くとおなかが前にせりだしていきますよ〜」

「先生はいつもせりだしてますが、いつも息をはいてるのですか?
いつ吸っているのですか?」

「いや、これは喰いすぎなのよね。私の腹はどうでもいいからやってごらん」

「喰いすぎをですか?」

てなレッスン風景。
ところが、剣道の気合を思い出し声の出し方を伝授。

「私を親のカタキと思って『えいっ!やあ!小手!面〜ん!胴〜おあ〜!』
と言ってごらん」

するとどうでしょう!見事な腹式呼吸でサックスを投げつけてくる生徒さんが…!

私のポリシー、「サックス教師は憎まれてこそ生徒が育つ!」
あるいは、実際の演奏のときの間の取り方。剣道というもの、ただただ竹刀を
振り回すものではなく、実際に竹刀が動いている時間はほとんど瞬間的なもの。
(私なぞは自分が打ち込まれた瞬間もわからず、審判の挙旗も見ず腹立たしさ
だけで相手につかみ掛かっていく事しばしば)その間何をしているかというと
相手の動きを見る、誘う、仕掛ける、というタイミングつまり間を計っています。

これですな、ジャズで大切なのは。自分の音よりも周りの音を聴く。
その点私は名人級。メンバーの素晴らしいプレイに聞き惚れて自分のパートを
忘れるくらい!また、MC(司会進行)で次の曲を言っておいて違う曲を吹き出したり。

しかしひるまずに堂々と吹ききるものでメンバーが瞬時に譜面を探して
合わせてくれます。「メンバー泣かせの一平ちゃん」とは私の異名。
実にありがたい名誉なことです。

 さて話は戻って、剣道部?いや中学時代。
不思議なもので三つ子の魂・・というのは突然出てきます。
なんと、中学時代にジャズファンになったのです。それもスイングジャズ!
特に、ベニーグッドマン、グレンミラー、トミードーシーというダンスジャズバンドの虜に。

家にはたくさんのその手のレコードがありましたので、聴くに事欠かない。
剣道部の激しい練習?(主に素振りと床掃除)から帰り、剣の道に於いては
命とされる竹刀を玄関先に放り投げ、水分の補給にグッと缶ビールを飲み干し
(それは今)そそくさと、犬が首をかしげてるマークの古いステレオでむさぼるように
浪花節を、いやジャズを…。

 一つスイングジャズの正しい聞き方の極意をご伝授。それは、各楽器の
ソロパートで、さも自分が演奏しているようにジェスチャーをすること。
コツは椅子に腰掛けて聴く。そしてソロ楽器が鳴り出す直前におもむろに立って
演奏の真似を。

これこそがジャズを楽しむ「五輪の書」の序章。
こういう聴き方をすると、曲を覚える、プレイヤーの名前を覚える、フレーズを
覚えるの良い事ずくめ。ただ、家人を含め人に見られないようにしないと…?
とは言うものの会社での宴会芸としては抜群の威力を発揮します?お試しを。

そんな中学時代を過ごし、ますますジャズにはまってゆきました。
そしてめだく高校時代を迎えた時には、完全にジャズフリーク。寝ても覚めても
ジャズ。しかしながらやはり高貴な吹奏楽部や軽音楽部には入らずなぜか弓道部へ。
よほど好きなんですなあ、武道が。

「ジャズは礼にはじまり礼に終わる」これこれ!このリズムが好きなんです。
弓道部?3ヶ月で辞めました。元来走るのが苦手というより嫌い。
すり足でじりじり追い詰めるのが好き。嫌な性格ですなあ。

一度は
「やっぱり刀より飛び道具よな〜大黒屋〜!」
と思い入部しましたが、走らされるは腕立て伏せはさせられるは、正座は
させられるはで「こりゃ体に悪い」と?

ましてや、「声が小さい!」と、のたまう先輩に、「なにをぬかすか〜〜!
あんたよりは大きいわい!」と逆ギレ。嫌な性格ですな。(これでよく24年間の
企業勤めが務まったと?)

しかし、あの時の声をデシベルで計るときっと私の方が・・・、何?そういう
問題じゃないと?嫌な性格ですな。

結果的には「やはり飛び道具より、刀よなあ越前屋〜!」と剣道部へ。
私の入った剣道部というのがこれまた非常に心地よい私好み。
走る、正座、叫ぶはご法度。

「弱きを助け強きをくじく」がモットー。

「健康第一、朝な夕なに感謝、礼拝、合掌」

「愛するべきは女の子、敬うべきは女性全般」

如何です?この男らしさ!ジャズミュージシャンたる者こうあるべし!と・・・。
最近新しいモットーが追加されました。

「男子、嫁の言うこと逆らわず、鵜呑みにて笑顔絶やさず」蛇足ながら。

高校の剣道部はさすがに中学時代とはうって変わり、素振り、床掃除にプラス、
過酷?な練習後、お好み焼き屋にて体力の増強という試練が加わりました。
この試練では私、列強の先輩にも一目置かれる存在になり、店のおばちゃんから
「20分でお好み焼き6枚食べたらタダ」という試練を見事15分で完遂し、
校外主将として3年間君臨致しました。生涯の自慢!

そんな鍛錬の毎日でしたがやはりジャズの呪縛からは逃れようもなく、
深みにはまるいっぽう。とうとうモダンジャズという恐ろしいものにまで手を出す始末。
ところが、ここで大事件が!

(いつもはここで「次回をお楽しみに」なのですが、今回はもう少し先へ進みます。)
もう1つの三つ子の魂が出たのです。

「落語!」

これには驚きました!

「刷り込み」

という心理学的要素、ご存知ですか?

 小学校時代より家にあったジャズレコードに混じって、落語があったのです。
実は父は落語、浪曲のファンでもあり、特に古典落語のファン。
ジャズばかり聴いていたつもりでしたがその音の渦のなかにマーブル状に落語という音が入っていたのです。

ですから、先述しましたミュージシャンと同列で桂春団治、米朝、松福亭松鶴、
柳家小さん、古今亭しん生、柳亭痴楽、林家三平 等々が・・・。

げに恐ろしきは落語なり!

知らず知らずのうちにジャズ同様、骨の髄まで染み込んでいたのです。
なぜ、ワクチンを飲ませなかったか?親を恨むところ。やはり越前屋に
「このご時勢、刀より、落語よのう〜」

と確認をし一目散に落語研究会へと・・・。

青春の多感な時期、ここで私の人間性が養われることになったのです。
はまると落語ほど恐ろしいものは無い。底なしの無限地獄なのです。
またもや、趣味が増えたために勉強などする時間が無い。剣道に明け暮れ、
お好み焼きに明け暮れ、落語に明け暮れ、近くの女子高の剣道部と
落語研究会との両方で他流試合に臨み、インターハイに臨み、落語会に臨み、
ジャズ喫茶(後日、詳しく掲載)に入り浸りながら落語のネタを覚えるという忙しさ。

止まれば死ぬというなんとか鮫のような性格。

これを「充実」と呼ぶか「おっちょこちょい」と呼ぶかは他人の意見。
自分としては足の向くまま気の向くまま。元来、わがままなんでしょうね。

「鉄砲玉」というよりも「はなから糸のない凧」!

今になって感謝するのは、クビにもせず放し飼い状態で面倒見てくれた
前述の会社と嫁さん。くわばらくわばら じゃない ありがたやありがたや!

という多忙?な毎日を送る青年?にまたもや一大事が。(まだ終わらないよ)
なんと、「ただいま」と帰ってきた父の手に大きな楽器ケースが!
そういえば、父にねだったことがあります、「トロンボーンが吹きたい」と。
私が一番気に入っていたのがトロンボーン。

グレンミラーやトミードーシーの斜に構えたレコードジャケットがいかにもかっこよく、
あの甘い、上品なサウンドが好きでジェスチャーまじりでレコードを聴くときには
必ずトロンボーンプレイヤーになりきっていました。「やった〜!」という感動も
つかの間、その大きなケースを開けてビックリ!

「これ、何?」

「まあこれでも吹いとけ!」と父。

なんと金色が剥げて錆の出たテナーサックス。

「なんじゃこりゃ〜〜〜!」

次回、「お後がよろしいようで・・・」
をお楽しみに。