トップページへ
「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

「テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い」編
第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

第四回 「若者は見た!行く末に襲いかかる甘い罠、
安楽な道大好き人間が描いた夢は現実となり、生涯で一度だけ親父を尊敬した。
そのかわり親父のアゴがはずれた!」

(遥かな道、テナー街道)

「大学受験だけど、お前、何処へ行く?」

と友人からの電話で「ふ」と気付くと、高校三年の年末。

「はは〜ん、謀りよったな越前屋!」

と呑気に構えている場合ではない!
落語のネタ覚えや剣道の卑怯な騙し技、はたまたサックスの早吹き騙し技・・・(騙してばかりの詐欺師みたい)こそ念を入れて練習をしてきたものの、金輪際、受験勉強なぞしたこと無し。

「さすがにあせりました。」

と言いたいところだがこれがまた「ケセラ・セラ♪♪♪」
困ったときの神頼みとは世の常、人の常。

「天にまします我らが父よ!この窮地から救い給え。
願わくは志望校に推薦頂きまして無試験でトップ入学できますように。
志望校はまだ考えておりませんが後ほど御連絡いたします。

あ、そうそう、ついでと言ってはなんですが、新しい剣道着と漆塗りの防具一式をお与え下さい。先輩から譲り受けた防具がボロボロで打たれると痛いので・・・・

また願わくは、父が持ち帰りましたあんな汚い錆びたスーパーマンの”S”のマークのサックスではなく黄金色に輝く新品のサックスをお与え下さい。
一応は父には感謝はしておきますので。

あつかましいとは思いますが、ステレオがだいぶ老朽化しておりますので最新のテクニクスかサンスイのオーディオセットをお与え下さい。父の使用も容認いたしますので。

また、願わくは、上方落語大全集の一巻から二〇巻までをお与え下さい、三巻と四巻、一五巻は買いましたのでそれは結構です。

また、先日隣の女子校の剣道部員吉村美鈴さんにラブレターを渡しましたが、どうぞよい返事が来ますように御取り計らい下さい。キャプテンの和美ちゃんはもう諦めましたので結構です。

それと、願わくは先日友人の田辺君に500円借りましたが、どうぞ彼が忘れていますよう, 節にお願い申し上げます。
と申しますのは、先月彼と映画を観に行きました際私のポップコーンをほとんど彼が食べてしまいえらく損を致しましたのでせめてその償いということで・・・

つらつら申し上げましたが御記憶が難しいのであれば早速書面にてお送り致しますが
出来ますれば、返信用の封筒、便箋、切手をお与え下されば幸いです。

何とぞ、迷える子羊をお救い下さい!アーメン!

するとどうでしょう、ふすまの向こうから天の父が・・・

「たばこ買うてきてくれるか?小銭無いから貸しといて」

やれやれ!

そんなこんなで一心不乱?に祈り続けましたが未だに何の回答も無し。神様、なんせお忙しい方ですので?

さあ、ここからが正念場、まずは受験校を決めなければといつもの盟友、越前屋、大黒屋、近江屋、悪代官、盗賊頭、抜け荷専門問屋等と会議。

「あえて東大は外そう、和田岬の灯台と間違われては片腹痛い。
京大でもいいが兄弟仁義と錯覚する輩がいても面白くない。
いっそケンブリッジかエールでもいいがバスの定期が無いらしい。
阪大は近いが中華飯店南大門とまぎらわしい・・・・」

と思案して間もなく、芸術系の大学に無事入学。(なんじゃそら?)
えっ?無試験?
なんと失礼な、ちゃあ〜んと試験を受けての見事合格!
えっ?定員に満ちてない?
なんと無礼な、ちゃ〜んと数倍の倍率難関?突破!

実際のところ、まさか合格とは思いませんでした。ツキがあったのか偶然か、何かの間違いか?それとも祈りが通じたのか?

そうそう、私自身の名誉の為に言っておきますが、田辺君に借りた500円は彼からの督促により、耳を揃えて
「持ってけ泥棒!」
と投げつけるようにして返しましたので念の為。

さあやって参りました大学時代が!

こうなると糸の切れた凧に突風が吹いているようなもの。
私から言わすと、フーテンの寅さんが公務員に見えますな!

ところが、なんと、これがまた授業が面白い。

一般教養なんざ普通面白くないのが常識なのですが、なんといっても今まで授業というものをまともに聴いたことがないので実に新鮮な気持ちに・・・・。

特に哲学、心理学など自分自身を例として考えるものだから分かりやすくてしょうがない。

ユングでは、私は一見外向性だが内向性傾向も持ち合わせ、行動に至るまでの過程自体を楽しむタイプであるということに感心し、
キャッテルでは、私は情緒不安定な行動パターンに見えるが案外自分自身を客観的に見ている為、二重人格的安定型と。
アイゼンクから言うと、私は両極を持つ連続体らしい。(よくわからん?)
シェブランガーでは、私は審美と経済に執心する集合体型宗教家だそうだ。(なむー!)

要するに、私はノーテンキの権化らしい。

「フムフム、占いよりも当たるなあ!」

と、はなから心理学というものを間違った観点から見ているものの、自動的に頭に入ってくるものだから試験の点数は良かったですなあ!少なくともビリではなかった。

哲学に於いてはまずその言葉や名前がすごい!
懐疑主義、独断主義、アルケシラオス、カルネアデス、そうです、ちがいます、ルネデカルト、セクストスエンベイリコス、
まるで恐竜の世界ですな!

ノートに自分流の恐竜の絵を描いてその下に哲学者や理論を書くと、これまた試験の時に恐竜の姿を思い浮かべるだけで名前が出てくる。
試験の点数は良かったですなあ!すくなくともビリではない。

どんなことでも自分流に解釈してしまうと楽しく学べますな。
いわゆる悦楽主義というやつ。

だから、ややこしいジャズミュージシャンの名前もすぐ覚える。
バディーデフランコ(クラリネット)ボビーエンリケス(ピアノ)パキートデリベラ(サックス・クラリネット)ポールゴンザルベス(テナー)バレリーポルマレフ(トランペット)リチャードエイブライマス(ピアノ)ニールスへニングオルステッドペデルセン(ベース)アンソニーブラクストン(リード)
わざわざこんな名前を出すこともないのですが。

あっ、そうそう、私何学科かというと芸術学部文芸学科。
何?どうなってるの?って?

だから言ったでしょ、両極を持つ連続体だって。
自分で自分がわかりましぇん!

というわけで日々、新鮮なキャンパス生活をエンジョイしていたわけです。が
なにか足りない。
そう、クラブ活動。これですなこれ。

さあて、剣道部、軽音楽部、落語研究会と華々しいクラブや同好会がある、ある、あるはずなのですが?
大学につきものの勧誘というものがない。
あっても掲示板にケレンミなく「部員募集」とか「来たれ新入生」とかのポスター。
「へえ〜、ふ〜ん」って感じ。

芸術系の大学なればこそ一般大学とちがう勧誘合戦や多種多様なクラブが存在し、
新入生と見れば道も歩けないくらい先輩たちが群がり寄り、手を変え品を変えの酒池肉林ではと?

私の頭の中では・・・・
(三味線と太鼓の鳴り物が賑やかに鳴り響き、光々と照らされた提灯のろうそくの中、おしろいとびんつけ油の香りが充満し・・・・・・・・)

「社長!社長!どうぞどうぞ当クラブに是非!別嬪ぞろいの先輩部員がそりゃもう下へも置かぬ接待でお待ちしてますよ、どうぞゆっくりしていらっしゃいまし!」

「お侍様!お侍様!私どもの剣道部へ是非。そりゃもう夢心地で素振りのお稽古をしていただけますよ。昇段試験?そこはそれ、魚心あれば水心と申しますでしょ・・・ヒッ
ヒッヒッ!」

「若旦那!若旦那!どうぞ当軽音楽部へ。入部が早いかデビューが先かってえもんでして、今登録されますと来週にはレコードデビューで、そりゃもうかわい子ちゃんのファンが列を成して追っかけて来まさあ!ささ、ささささ・・・」

と想像していた私。

ところが、そんな勧誘は見あたらない。

いつものように入学当初から気の合う学友たちと学生食堂へ。
いつものように彼達と哲学?心理学?今後の日本国のあり方?を馬鹿笑いしながら論じ、お気に入りの「ハムカツカレーの大盛り」と「ハイカラうどん」と「3色モナカ」を食べていると、横に真っ白けで裸同然の坊主頭の女性が突然座り・・・・?

「ギャーアアア!」

と叫んだのは向こうの方。

天空を指し、なにやら芝居の台詞を叫びながらクネクネ踊る。と思いきや、後ろから別の真っ白けの入道が私に一輪の薔薇の花を手渡し、その花びらを一枚ずつちぎりながら・・・・

「新劇団で〜す!新入生諸君、入部お待ちしてま〜す!」

「なんじゃこりゃ?」

これが前衛劇団の勧誘。

今度は、侍というよりも旅烏姿で刀を差し、手っ甲脚半にちょんまげで看板を持ちながら「清水の次郎長の唄」を唄ってる。

これが、新国劇研究会。

次は、段ボールで作ったロボットの衣装を着てる「鉄人28号」の横に、シーツを被って
頭に毛が3本の「おばけのQ太郎」

これが漫画同好会。

昼休みの学生食堂でこういったものを見ると、気が変になりそう!

「えらい学校に入ったものだ」 と・・・・

笑うに笑えず、泣くに泣けずハムカツカレーのカツにルーを塗りつけている時でした。

「パッパラパッパッパー!」

窓の外からトランペットの音が・・・・

スワ!もしやジャズ?とカツをほうばりながらよく聴くと、
演奏学科というれっきとした学科生の練習。

そうなんです、この学校、それぞれ芸術家を目指す玄人予備生ばかり。
考えてみれば、一般大学とちがい専攻学科自体がクラブ活動のようなもの。
だいいち、学科の名前が

芸術学部
文芸学科、放送学科、美術学科、舞台芸術学科、演奏学科、造形学科、建築学科、というように専門分野。
どうりでクラブ活動があまり目立たず、消極的に見えたのは本分の勉学?のほうが
派手だった為。

どこからが勉学でどこまでがクラブ活動なのかがはっきりしませんな。
まあ 「おばけのQ太郎」 は座興として、いや待てよ?もしや?
「造形学科の試験」だったかも?

そんな混沌とした毎日を過ごしていた時でした。
食堂の掲示板に

「ジャズ同好会、部員募集!」と・・・・

なんとあっさりした貼り紙。
画用紙にマジックで書いただけ。
せめて音符なり楽器の絵くらい描けよ、と・・・・。

その紙に描かれている地図?を頼りに部室なるものを訪ねてみるとなんとそこは校外の農家のガレージ!

「ごめん下さい、ごめん下さい」

「んん、こんな大雨の夜更けにどなたじゃ?『ガラッ』 どうしたのじゃ、旅のお方」

「はあ、ジャズ同好会を訪ねておりましたが道に迷いまして」

「おうそうか、ま、とにかく上がりなされ。『ばあさん客人じゃ!』 して、ジャズ同好会とな?」

「ハイ、部員募集という張り紙が学校の掲示板にありましたもので・・・」

「わしじゃ!ココじゃ!」

というわけで瞬時に入部完了。

次の日から早速練習に、なのですが部員は私を含めて5人。
それも、部長がトランペット、副部長がアルトサックス、マネージャーがドラムス、もう一人?がこの人が難しい。要するにご意見番というかリスナーですな。
そしてテナーサックスが私。

とても輝かしい芸術大学のジャズ研究会とは思えぬ体たらく!
ところが、人の縁とは面白いもの。
なんと、このご意見番というかリスナー係の先輩が剣道部!
ましてやこのお方、大阪の剣道では名門とされる高校出身の有段者。

それが何故またジャズ研かと問いますと、部長のトランペットの先輩と同じ美術学科の友人で
「何となく」・・・と。

この先輩、私の剣道の経歴を聴くと、いとも気楽にあっさりと、

「君、良かったら剣道部にも来ない?」

かくして剣道部にも入部。
なんと、剣道部は二十数名の大所帯?そしてこの先輩、強い!強い!
上背は小ぶりで色白、柔和な童顔でどこから見てもむしろひ弱なボンボン。なのだが
ひとたび竹刀を握ると技が早い早い!
全身バネのような俊敏さで、メンの技が大きく美しいし、剣筋がまっすぐ振り下ろされ豪快な迫力に満ちている。

私なぞ、範士八段の師範からよく叱られたものです。

「君、勝てば良いってものではないですぞ!技が汚れています。もっと大きく真っ直ぐに打ち 込む ことが剣の道!」

そう言われると私の得意技?は

引きメン横打ちから引きつけておいて逆胴、とか
小手はちょい当ての二段打ち、余勢で突き、とか
抜き胴の体勢で横メンを打ってから鍔競り合い、離れ際に引きメンと見せかけておいて
突きを狙う素振りで小手と・・・念の為もう一つ小手と。
嫌な性格ですな!

このコラム、真摯な剣道家がお読みになられたら、私なぞ即除名でしょうな!

さて、皆様ご存じ、恒例のバタバタ貧乏が・・・・・とここまで言うとよくおわかりでしょう。
そうそう、寸暇を惜しんで芸を磨く、といえば格好が良いのですが好きな事だけに没頭するというヤツね!

ところが、このバタバタが ハタ と止まった!

ある日のこと、別学科の友人で「プーさん」というトロンボーン吹きがおりましたとさ。
そのプーさん、その後30年来の友人として現在も存命(失礼)おつきあいさせてもらってます。
プーさんの紹介で、当時リズム&ブルースで名をはせた「シンジケートチャプター」というそれはそれは恐ろしい人気バンドのヴォーカリスト「シン」という人が尋ねて参りました。

シン 「ゴメン!ゴメン!」

私 「あやまるんやったら帰ってや!」

シン 「いやそうでは御座らぬ、ちと小耳に挟んだのじゃがお主サックス吹きであろう。」

私 「うぬ〜、よくぞ見破ったな。そうと知った限りはタダでは返さん。なんぼかちょう     だい!」
シン 「何!こしゃくな!さあ吹け、吹いてみやがれ!」

私 「片腹痛いわ、これでも喰らえ!プップクプップップ〜♪♪♪ズズズ〜♪♪♪」

と、私はあの有名な演歌テナーの神様(実際にはベンウエブスター派のジャズジャイアント)サムテイラーのハーレムノクターン(よくストリップなどでバックミュージックに使われる名曲。)をお見舞いしたのでありました。

シン 「な、なんという自堕落な下品な吹き方。人としてのプライドいや、ジャズサックス    吹きの風上にも置けん輩。早速我がバンドに入れ成敗してくれるわ!」

ということでバンド入り。

実はこの「シンちゃん」私をオーディションしに来たのです。即決とはこのこと。
当時のサックス吹きはかの有名なジョンコルトレーンスタイルが多く、メカニカルなフレーズで斬新なアドリブを披露するスタイルが流行でした。
それに引き替え私のスタイルはメロディを浪々と、又、グロウルという喉を鳴らして唸るようなブルーススタイルでなんとも古めかしい。(実はそれしか出来なかった)

なにが幸いするか解らないのはこの世の常。
シンちゃん大喜びで

「ええがなええがな!その下品さが、その退廃的なのが、その押し出しとしゃべり?が。今週末大阪のライブハウスでライブがあるから明日、和歌山へリハーサルに来てくれる?」

なんと和歌山?ほとんど旅行気分で出かけて行ってそのままメンバーに。

「棚からぼた餅」人生のなんと多いこと。
考えてみますと、別に金持ちでもなく御曹司でもなくごくごく普通の生活。

チャンバラのつもりで剣道をすると、たまたま師範が名誉範士八段という爺さん。
「トロンボーンが吹きたい」と言うと、
間違ったか有る物で賄ったかは解らないが、サックスという少なくとも管楽器が手に入り、
落語をやっているとラジオ出演、おまけに”笑福亭仁鶴師匠”にお逢いできた。
受験勉強なぞ一切無しで大学入学。
そして、たいして吹けもしないのに、オーディションで人気バンド入り。(何故人気バンドなのかは後日ご紹介)

こんなことがあると人間自分の運命自体を悦に入り、堕落するのが相場なのですが、
もともと堕落した性格ですのでそれ以上堕落しようがない。
堕落しようにも時間が無い。考えることもしない。
これこそ風の向くまま気の向くまま。突風に糸切れの凧状態ですな。

しかしやはりそこは人として、今までの自分の境遇を支えてくれた親に感謝をせねばと思い、父に報告を・・・・

「父上、ご報告が御座ります」

「どんな?」

「実は私、オーディションに合格致しまして」

「また商店街の大売り出しの呼び込みか?」

「滅相も御座りません。音曲バンドの・・・」

「ほ〜?」

「今までのご恩を感謝すると共に、私、玄人音曲師として身を立てます故・・・・さらばで御座る〜〜!!!!」

「アホ!」

              次回 第五回 「スーダラ節」 
                                     をお楽しみに!