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「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

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第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

第二回 「ええっ!演るの?」
(アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会)

 私の唐突な「アートブレイキー?」の一言に彼も驚いた様子で、一瞬の沈黙の後、

「お前は俺を知ってるのか?いつ、何処で会った?」

その問いかけを私は無視して、彼がさし伸ばしてきた握手型の手を、
私の両手でしっかりと包み、先ほど飛び出してきた私の本日の職場?
「バーボンタイム」へと彼を引きずるようにして歩き始めました。

今考えると、
「よくもまあ見知らぬ日本人に手を握り締められてついて来てくれたなあ」と。

あのときの私の失礼な行動を恥じる思いと、彼の従順な態度に尊敬の念すら
覚えますが、一重に「ジャズ」という言葉と「楽器」、それに加え無償の「笑顔」
が人の心の交流をさせてくれるものだなあと感じます。

 バーボンタイムに着くまでに、彼の流暢?な英語と私のたどたどしい日本語英語の
やりとりがあったと思うのですが、そのときの映像こそ脳裏に焼きついているものの、
会話については全く記憶がないので割愛します。

 「バーボンタイム」の入り口に到着し、レンガ造りの階段を降りていきますと、
まず、先ほどまで一緒に演奏していたメンバー達の後片付けの姿があり、その奥に
店のオーナーと従業員が少なくなったお客の接待をしていましたが、真っ先に
私の姿をみつけて声をかけてきたのがメンバーの一人、ドラムスの
「奥沢はん(仮名)」でした。

「一平ちゃんどないしたん?忘れもんか?」

黙って半開きにした口から言葉を発っせずにいる私にもう一度、

「なんやねんなあ、どないや?」

注 ここでお断りしておきますが、関西地区以外で育まれました読者の皆様で、
いわゆる「大阪弁」がよく理解できないとおっしゃられる方がおいでになられましたら、
ご多忙中誠にお手間を御取らせして恐縮では御座いますが、ご友人、ご親戚等を
頼られまして、「大阪弁」の御解釈をして頂きますよう宜しくお願い申し上げます。
…店主軽薄?

 奥沢はんは、やや苛立ち気味ではあるものの、私の尋常ではない様子を瞬時に
察知し、心配そうに笑顔を送ってきました。そこで私はやっと、熟考に熟考を重ね、
選び抜いた言葉で、

「アートブレイキーつれて来た!」

その私の言葉が終わる直前に、あろうことか、ブレイキーは私の名前「一平ちゃん」を
連呼しながら、奥沢はんに近付いていくではありませんか。あの時の奥沢はんの
仰天のけぞり姿は、私の脳の映像ポケットにカラーでくっきり焼きついていて、夏場に
時々思い出しては「ゾッと」して楽しんでいます。

 さあそれからが大騒ぎ。バンドのメンバーはただただ奇声を発しながら狂喜乱舞!
店のオーナーは上気し赤面し充血しながら、ビールは出すわ、ウイスキーは目の前に
並べるわ、日本酒は一升瓶ごと持って来るわ、ピザは焼くわ、ポテトは揚げるわ、
ステーキは焼くわ、すしの出前を注文するわ、どこかへ電話をしまくるわで、今まで
おしゃべりしていたお客そっちのけで店内を駆け巡っていました。

そのとき、当のブレイキーは

「ワッハッハッハ〜、イペイ、イペイ」

と相変わらずハスキーなドスの効いた神の様な声で私の名前を連呼。
余程私の名前が面白かったのでしょう。ブレイキーは目前に並ぶ、きら星のような
飲み物と料理には目もくれず、自分の好物を大きな声で注文しました。

「コーラ!」


なんと欲の無い、まるで聖人のような清らかな人なんでしょうと、めまいがする思いで
私は彼に聞きました。

「コーラ?」

すると彼は言いました。

「イペイもコーラが好きなのか?」

このやりとりの直後です。とても神の御言葉とは思えぬ恐ろしい言葉が彼の口から
発せられたのは。おもむろに彼は私に命令しました。

「演れ!」

「え?」

「レッツ!」

「ええっ!演るの?」

「ブルーズ!」

 さあこの後、再び恐ろしげな事が次々に・・・。
では、第三回 「イペイ、ロバートに電話しろ!」をお楽しみに!