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「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

「テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い」編
第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

第四回 「どうして?そんな事までしてくれるの!」
(アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会)

 ロバートワトソン、デビッドシュニッター、バレリーポルマレフ達が、楽器片手に
ステージに集まってきた時、私は必至の形相でサックスに満身の息を
注入していました。

いや私だけではなく、私たちのメンバー全員がまるで滝に打たれる修行僧の様に、
天の何様に祈っているかの如く無心で楽器に取りすがっていました。


 私は7コーラス程もアドリブを敢行したでしょうか、はっきりとは覚えていませんが、
プレーヤーの方でしたら御理解頂けるでしょう、勢も根も、アドリブフレーズも尽き
果てようとした頃、例の3人が一斉に私のバックリフを付けてくるではありませんか。


「ワオ〜!」

仰天の雄叫びが私のサックスの先から声となって放出されました。

ロバート、デビッド、バレリー3人のまるで17人編成超一流ビッグバンドの様な
一糸乱れぬリフフレーズが私の背後から押し寄せたのです。


「ええ〜ッ!もうアドリブの種が無い。終わろうと思っていたのに」

失礼ではありますが正直、私としては「有り難迷惑」の心境でしたが、即座に自分が
大たわけ者であることが証明され、その後現在に至るまで私自信の音楽人生に
於ける「座右の銘」ならぬ「座右の音」としての音楽観になっている事が
勃発したのです。


何と!次から次へと私のサックスがフレーズを唄うではありませんか。

「どうなってるねん?」

奇跡は急にやってくるものです。

フロントで奇跡に右往左往、驚愕連吹、脳髄ケイレン、優柔不断している
サックス吹きなど気にもせず、バックリフを演奏している聖霊たちは、それぞれの
得意とするビートとリズムを醸し出し、しかもリフメロディーは一本の太い幹から
逸脱せずに、まるで3人の楽器が私の背中と尻をミュート代わり(注、例として、
トランペットの先に装着して消音の効果音を出す為の金属製のカップ)にするように
吹いていました。

ロバートの吹くアルトサックスはスイートな女性的な高音部を駆使し、滑らかな
粘りのあるクリームソースのように、デビッドのテナーサックスは、男性的で豪放な
低音部でパワフルなラテンビートを
トランペットのバレリーは直立不動で目を
閉じながら、幾何学的インパクトのあるパルスフレーズを淡々と・・・


するとどうでしょう、私の狭く薄っぺらいインプロビゼーションの引き出しから、
手品のように蝶や花束や万国旗、はたまたインド象やコブラ、始祖鳥や
シーラカンスまで出てくるではありませんか。


これには驚きました。朝から、いや昨晩から食材の仕込みをしていたわけではなく、
瞬時にスパゲッティとオイルと塩だけでフルコースが出来上がるといった具合。


その数分間、御大アートブレイキー様はステージには目もくれず、なにやら
店のオーナーや従業員とコーラ談義に打ち興じている様子。


私はこの経験で、

・如何にソリストのみならず、バンド全体を盛り上げるか。
・相手が誰であろうと自分がバックアッパーの役の時はバックサポートに徹する。
・窮する相手には全身全霊で援助する。

もう一つ、

・本人も悦にいるような見事な演奏が出てきたら・・・・・・・・・・放っておく!

いやはや、やっと私の「玉砕覚悟」のソロが終わると先陣を切ったのは
トランペットのバレリー。


 なんと、私をいたわるように賞賛の会釈をしながら・・といってもさも、運動会の
リレーで幼稚園児が転びながらもバトンを握り締め、膝を擦り剥きうっすら目に涙を
溜めてどん尻にゴールした時に送られる声援のようなしぐさで…

そして吹き始めると、先ほどまでの私の「死に物狂いソロ」とはうって変わり、
天使のささやきの様な優しい音色と、ゆったりとした朗読の時の様なリズムで、
その場の空気の色を瞬時に塗り替えるではありませんか!


「流石」なんて言葉じゃなく、ため息しか出なかったことを思い出します。

「ぼ〜っ」とバレリーの横で立ちすくむ私の肩を強引に引き寄せ、バックアンサンブルに
「合流しろ」とばかりに大げさなフィンガーワークでサックスのベルを私の立派な
股間に?(失礼!)そこそこの股間に?(失礼!)貧弱な股間に?押し付けながら
リフフレーズを教えに来たのはテナーのデビッドシュニッターでした。


そのしぐさはまるで手とり足取りのように。

 そして、めでたく「ジャズメッセンジャーズバックリフ隊」に入隊許可が下りたとき、
ふと前に目をやると、そこには、なんとっ!!!!!神が!


アートブレイキー様がじっと今のフレーズ伝授の模様を真顔で見ているでは
ありませんか!


その距離、50センチ。
そして、一言

「イエ―イ、イペイ」

その時、横でリズムを刻んでいた「奥沢はん」は殆ど逃げ腰半立ち状態で、
あけ開いた下あごが胸に付いていました。


大胆にも「奥沢はん」は愛想笑い(正確には泣き)でスティックをブレイキー様に
突きつけると神は「ドワ〜〜〜」と笑い、スティックを受け取りテレながら「奥沢はん」と
入れ替わり、そしてスネアー(叩き手の膝内の小さい太鼓)を叩くとおもいきや!
太鼓の皮にべたべたと張っているガムテープを剥がしにかかったのです。

それを見ていた「奥沢はん」の目元は潤み、顔半分は赤面、半分は貧血状態で
自分の貼ったガムテープを黙々と爪の先で剥がしていました。

その後「奥沢はん」は金輪際、テープというものを嫌い、膏薬、シップ類でさへ
押しピンで留めていたとさ・・・


テープ剥がしも終え、「さあ」とばかりに神様が背伸びをした時、
ふとある事に気付いたのです。


今まで鳴っていた「シャッ!、シャッ!」という小気味の良いシンバルの
リズムキープ音は誰が演っていたんだろう?と。


読者の皆さんはもう御気付きになっているでしょう!
そう、これが背後霊?ラップ現象?

いいえ、ブレイキーがテープ剥がしの間中、ずっと左足でハイハットを
操っていたのです。


もう、私にとっては「おいどの穴でサックスを吹く…」失礼致しました。関西地区以外の
読者の皆様、ゴメンナサイ!そして関西圏の殆どの精錬潔白、実直を以って人と
成す、汚れ無き清水を自らの血潮とする皆様にも…一部私めと同族の御方は
笑ってやってください。(本題に帰る)息を吸ってサックスを吹くようなもの!


この後、全員が、目の前の「ナイヤガラの滝壷」に呑み込まれようとは!
ま、だいたい予測してはいましたが…なんと!その深さと、壷底にあったものとは?


では、

第五回「神様が怒った!」


をお楽しみに!