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「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

「テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い」編
第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

最終回 「イペイ、神を信じろ!」
(アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会)

 ブレイキーとメンバーの接客業務も終盤を迎え、僭越ながら私も神々を待つ間、
楽屋に散乱したコーラの紙コップや灰皿の後始末のお手伝いをし終えた頃、
先ほどのブレイキーの言葉、

「セッションの手はずはできているのか?」

を思い出し、不安と心配とがまたもや一機に押し寄せて、居ても立っても
居れない様な状況に追い込まれたのです。「店に電話をしてみよう!」と
思った途端、ブレイキー達が接客を終え、ワイワイと楽屋に入ってきたのです。

「イペイさん、お待たせして申し訳御座いません!」

と平身低頭、先頭に入ってきたのはトランペットのバレリーポルマレフ!

「いえいえ、なんのなんの、それはそれは、儲かりまっか?ぼちぼちでんな。」

とあたふた意味不明な返答をした私。

ブレイキーは少し疲れた様子で長いすに腰を下ろし、しばし小休止。
その他のメンバーはワイワイガヤガヤと本日のプレイの反省会かと思いきや、、

「ロバートはもてるな〜」

「いや、デイビッドの方がもてるさ」

「俺よりも、案外、バレリーの方が好色かもな」

「だけどお前、あのチャーミングな女性の手にキスしたじゃないか」

「お前だって、ロングヘアーの女の子の耳元で何やら言ってたじゃないか」

等々、ジャズに関する?深〜い深〜い反省会!
その間、ブレイキー様はメモの様な紙切れを数枚ポケットから出し、黙読、音読。
ついにその時が来ました。

「イペイ!レッツゴー!」

「きゃー!!!!」

と私の黙々とした心の叫び。

と同時に、先ほどまでのワイワイガヤガヤが消えうせ、皆、それぞれの
楽器ケースやスーツケースを持って、そそくさと楽屋から退出して行くのです。
その素早さといったら「流石はプロフェッショナル!」と眼が点になる程。
結局私が取り残された状態で、急いで先ほどブレイキーにサインしてもらった
レコードジャケットを小脇に抱え逃げるように楽屋から退出。
すると列の前方から、

「イペイ、イ〜ペ〜イ、」

と呼ぶ声は神の声!

「儲〜か〜り〜ま〜っか〜!ぼ〜ち〜ぼ〜ち〜で〜ん〜な〜!」

とも言えず、ただただ

「イエ〜ス!イエ〜ス!」

の連呼繰り返し。

あの時私は一生ミュージシャンに賭けるか、勤め人として安定した人生を
目指すか、はたまた、牧師か神父を志し、「イエスさま」に御仕えするかを
悩みましたわいな!

 さて、時は変わって元禄……違う、違う。
(敬虔な宗教者の方々、そして、神様、仏様、その他の
天上の何様、失礼致しました。ごめんなさい!)

「イペイ、なにやらハウスは何処だ?」

と、またもや神のお怒りにも似た声が。
そんなこんなで転がりこむ様にバーボンタイムに到着。
すると、店の路上に大勢の人影がひしめきあっているではありませんか。

「何かあったのか?今日はカーニバルの日か?
消防やアンビュランスは来ていないようだが?」

とブレイキー様。
私はすぐさま、

「はは〜ん!」

と納得し、安堵と満足とマスターの商魂に感服した次第、いや、商魂ではなく、
せっかく来てくれるゲストに対する愛情や熱意を感じました。

「イエーイ!」

と路上の大歓声の中、人垣から握手を求める手、手、手の波を泳ぐように店内に
入ると、そこはもう溢れんばかりの具の入ったパエリア鍋の様相。
立錐の余地が無いとはこの事。

するとマスターがカウンターの奥から手招きをしながら

「一平ちゃ〜ん、一平ちゃ〜ん」と

あの時ほど「人間、嘘でもいいから、理由はどうあれ、瞬間でも、
『愛されている』と感じることができる喜びって大切だな・・・」と感じました。
クワバラ、クワバラ!

 さあ、もう止まりません。
入店から3時間余り、拍手喝采、嬌声、罵声、すすり泣き、万歳三唱、注文殺到、
グラスは割れるわ、トイレは詰まるわ、蛍光灯の呼び出しは切れるわ、
ポテトは生やわ、レジは開けっ放しやわ、とろけるチーズは手の甲に落ちるわ、
テーブルクロスは焦げるわ、脚立は開くわ、フローリングは剥がれるわ、
障子の骨は折れるわ、鎖鎌の鎖はちぎれるわ、長靴の片方は流れるわ、
の大騒ぎ!

…ご理解頂けましたでしょうか?

その間、これでもか、これでもかの大セッション大会!ジャズミュージシャンの
第一条件は「体力と根性!」と心得ました。γGTPとかGOT、尿酸値とか血糖値、
肥満度や十二指腸潰瘍痕など、何処吹く風くらいでないと!
※申し上げます。健康診断にて上記項目及び上記以外にも(要精検)が
看られた場合、何を置いても速やかに受診される事をお勧め致します。
健康第一!御家族の幸福は先ずは健康から!命あっての物種!
僭越ながら・・・


入れ替わり立ち代りという言葉は存在しません。ず〜〜〜と吹き続け弾き続け!
ジャズブルースから始まり、スタンダートナンバーのオンパレード。続いて、
マーチングリズム、ゴスペル、民謡、斬新なニュージャズ。

その間、食べて、飲んで、吹いて、飲んで、食べて、叩いて、弾いて、
飲んでは吹き、食べては弾き、吹いて弾いて飲んで食べて!

お客は半狂乱。
おそらく、次の日、声が出なかったり、足腰が立たなかったり、手のひらが
真っ赤に腫上がり握る事さへ出来なかったりした人も居たことでしょう。
ご苦労様!

コンサートとは違い、目の前数十センチ数メートルの目前で、かの
「ジャズメッセンジャーズ」の演奏が繰り広げられるのですから。
おまけに、今で言うミュージックビデオの主人公への飲み物や
食べ物を渡したり預かったりしながらのライブ!

殆どプライベートライブの様相。
しかも、演奏中に打ち合わせや雑談、相談やレッスンまでもが
曲の一部として挿入されるのですから。

「イペイ、お前が次のコーラスで先行しろ。俺はちょっと
トイレに行くから、帰るまで何とか持ちこたえておけ」

「いいえ、それはとても無理です、ロバートさんに言ってください」

「まあ、演ってみろ。危なくなったらバレリーがフォローしてくれるから奴に頼れ」

「だめだめ、フレーズが底をついてもうこれ以上吹けません」

「俺ももうこれ以上小便を我慢できない。後は任せた、早く吹け!」

「わ〜〜バレリーさんがピザ食い始めた、あれっ?ワトソンさん
コーラ頼みに行っちゃった。助けて〜!」

「イペイ、フレーズが無かったら唄え!スキャットだスキャット!わ〜漏れる〜!」

てんやわんやのピーヨコちゃん。

今考えると、あの時の緊迫した状況がどれほど糧になっているか。
私の「ま〜ええか!」精神はあの時に培われました。やがて超満員にも関わらず、
店内にレコードのBGMが淡々と流れ、ミュージシャンもお客もマスターも、深い
満足感に浸り、各テーブルでは物静かな話声しかしなくなった頃、
神様ブレイキーは自分のテーブルに私を呼びました。

「イペイ、カモーン!」

私は何かに引き寄せられるかのように彼のテーブルに吸い寄せられ、
ブレイキー自らが尻をずらして開けてくれた特等席、VIP席であるブレイキーの
横に座りました。

「今日のお客に神様が居たのをお前は見たか?」

「何て?」

「イペイ、お前はメッセンジャーだ」

「メッセンジャーズなんてとんでもない。あなた達
ジャズメッセンジャーズは私にとって神様のような存在・・・・」

「違う、メッセンジャーズは俺達だ。メッセンジャーはお前、イペイだ!
いいか良く聴け!俺は凄く楽しかったし、メンバーがあんなに楽しそうに
演奏しているのを見て嬉しかった。

でも、神様はイペイ、お前にその仕事を任せたんだ。

俺とお前がこのニッポンのオオサカのストリートで逢って
友達になれたのは(ここで私は失神)神様の計画なんだ。
いいかイペイ、お前はメッセンジャーに選ばれたんだ。
きっとお前はジャズを忘れないし、ジャズに生きる事になるはずだ。

俺達も同じなんだ、だから「ジャズメッセンジャーズ」なんだ。
俺も子供の頃、お前と同じような洗礼を受けた。お前は知らないかも
しれないが、テディーウイルソンっていうピアニストだ。
(知ってる知ってる!知らないものか!)

彼に出遭ったことが俺の運命を変えた。
苦しい時には今でも彼の声を思い出す。
「アーサー!お前はメッセンジャーだ!」って。

イペイに逢った時、お前は自分はノンプロフェッショナルだと言った。
俺は意味が解らなかった。今でも解らない。ジャズは神への祈りだけど、
神の答えでもある。メッセージを伝えたり送ったりするのがジャズだ。

神の仕事に金は関係ない、金は人間が使う道具だからな。
だけど、道具はあったほうがいい。メッセージをたくさんの人に
上手に伝えると、もっとたくさんの人に上手く伝えられるように
道具を与えられるんだ。

いいかイペイ、お前のサキソホンは

神様からの道具、贈り物だと思えよ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

もう、これ以上は書けません。
だって(アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズ)とのラストソングには
メロディーが無かったから・・・・・・・

次回、第一回「ジョニーグリフィン?」