トップページへ
「アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズとの大セッション大会」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回/最終回

「テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い」編
第一回/第二回/第三回/第四回/最終回

「遥かな道、テナー街道」編
第一回/第二回/第三回/第四回/第五回

第二回  「いや、だから、それはあなたです」
(テナータイタン!リトルジャイアント!ジョニーグリフィンとの出逢い。)
「マイフレンド!どこで会った?」

 唐突かつフレンドリーかつ気軽なグリフィンの問いかけに、仰天したのは私。
なんといってもあの!ジョニーグリフィンが目の前にたたずんで、まるで私のことを
久しぶりに会った旧友のような眼差しで、しかも何かを思い出そうとしているような
素振り(胸の前で右手をぐるぐると、納豆の糸でも巻いているように回している)。

「そりゃ、思い出そうとしても無理ですよ!初対面なんだから!」
とは私の心の声。

あまりにもその(ぐるぐる)が長いので気の毒になり

「私はアマチュアのテナー吹きで、あなたの大ファンです!」

と。

彼はハタと我に返り、

「オー、君もテナーか」

 このときの「君も」という「too!」は私にとって座右の銘?いや、生涯の誇りとなり、
この一言のために「生涯テナーを吹こう!」と決意しました・・・が?・・・たしか
数年前に神様(アートブレイキー)にお逢いした時にも決意したようなしないような?

ともかく、「リトルジャイアント」本人からの言葉ですからそれはそれは有り難いやら
恥ずかしいやら。

そんな感動をかみしめている間にも、質問の嵐が彼の口からビュンビュン
飛んで来ました。そのビュンビュンを瞬時に解読できるほどの英語力を、
たまたま?あの時は?出張で?持ち合わせていませんでしたので、
なんとか聞き取れて理解できたビュンビュン、

「あなたのお名前なんてーの?」
(ここで御笑いになった読者方々は少なくとも40代後半?
かの有名なトニー谷の・・・まあこれは蛇足)


という質問に即座に答えて握手を求めましたところ、彼も律儀に姓名を名乗り、
なんと日本式の、腰を深々と折りまげてのお辞儀をしてくれたのです。

「グリフィンさん、あなたは私のアイドルです。だからあなたをよく知っていますよ」

「えっ!どこで会ったっけ?」

また、ふりだしに戻りそうだったので私は黙ってニコニコとだけしていました。

「グリフィンって律儀なジェントルマンだなあ。」

という印象を持つが早いか、驚くが早いか、彼はいきなり私の
ウォークマンを引きちぎるように取り上げ、イヤーフォンを自分の耳に…

「ワオー!この演奏は君なのか?」

と…。

「そんな訳ないでしょ!これはベンウエブスターですよ」

「ワオー、俺もベンが大好きなんだ。でもこの演奏は聴いた事がない。
凄いプレイじゃないか!君もこんなスタイルでプレイするのか?」

「とんでもない!できるもんですか。彼はテナータイタン、神様ですよ。」

「君もそう思うか。俺も思う。俺達、似ているなあ。」

俺達似ている・・・なんというフレンドシップというか、気さくというか、とても
テナーサックス、いやジャズの歴史を創ったビッグミュージシャンとは思えぬ人柄…
と感動に浸っている間も例の「グリフィンビュンビュン」は止まる事を知らず、質問責め。

「君はここで何をしているのか?何処から来て何処へ行くのか?
そのかばんに何が入っているのか?ベン以外に誰が好きか?」

『あなたです。』

「ピアノは弾くのか?どんな曲を演るのか?」

『あなたの演っている曲です』

「ボディアンドソウルって曲俺は好きだが君は誰のボディーアンドソウルが好きか?」

『あなたのヨーロッパ録音のが最高です』

「あの曲のサビの部分に俺はセックスアピールを感じるが君はどんな風に吹きたい?」

『あなたのように!』

「結婚しているのか?子供は?サキソフォンは何処のブランドを使っているのか?
俺は今はフランス製のセルマーを吹いているが。」

『私もです』

「昔はアメリカ製のキングっていうレディーを吹いたが、」

『私も』

「あれは最高だった。ええっ?君は何故キングが好きなのか?」

『あなたが使っていたから』

「そうか、俺も一番気に入っていた。同じだなあ。似ているなあ俺達!」

こんな具合。

その口調や言い回しが、流麗なスピード感のある緊迫した彼のアドリブプレイ
そのまんまで、鼻声のようなくぐもった独特の声までもが、彼の吹く
テナーサックスのサウンドに酷似していました。テナーサックスという楽器、
男性の声に一番近いとされていますが、テノールという音階だけではなく、
ニュアンスやサウンド、表情までもが吹く人間の生業そのままに表現されることを、
私はこの時痛感したのです。

グリフィンの(立て板に水)の如き話ぶりがあまりにも嬉しそうで、ジェスチャーを
交えながら投げかけてくる質問は、あるときはプライベートな、あるときは音楽や
楽器の事と、まるでシカゴのラジオ番組のディスクジョッキーを聞いているような
錯覚を覚えました。

その内、私は本物の彼と接しているという感動が徐々に高揚を増し、遂には
返答をすることさへ忘れて、じっと彼の顔をまじまじと見続けていると、
彼も観察をするように私の顔をじっと見ながらしゃべっていました。

 突然、彼は言いました。

「君、アートブレイキーを知ってる?」

「えーっ!」

私はその名前を聞いただけで身の毛がよだつ思いに駆られ、
思わず後ろを振り返った次第。
(なんと!またもや出たか、妖怪いや背後霊いや守護神アートブレイキーおやじ!)

「ええ!知ってますとも」

「会ったことある?」

「ええーっ!」

世の中には自分の経験を偶然言い当てられるということもありますが、
このときは私がそう思い込んだだけで、グリフィンの意図は他にあったのですが、
まんざら偶然でもないように思いたい私。この気持ち、お解りになって
頂けますでしょうか?

彼は続けました、

「俺は若いときにアートブレイキーのバンドにスカウトされたんだ。
ブレイキー&ジャズメッセンジャーズは売り出し中で、俺たち若手の憧れだった。
スカウトされたときにはもう天にも昇る気持ちだったんだが、それが何処で
スカウトされたと思う?」

「劇場の楽屋?」

「違うんだ、駅だよ、シカゴ駅。楽器ケース片手に新聞を読んでいたら突然目の前に
突っ立って『フレンド!』って肩を叩くんだ。びっくりしてよく見ると、彼だったんだ。
今、君とこうして話をしているとそのときのことを思い出してね。」

なんたる偶然!

私のアートブレイキーとの出会いとそっくり。グリフィンと私、その後の人生には
あまりにも差があるにせよ、出会いによって人生が変わったことは確か。

「あのおやじ、本当の神様かも?」

私と会ったことでブレイキーとの出会いを思い出したなんて、私にとって
なんと嬉しい言葉。目頭が熱くなり、グリフィンに抱きつきたいような気持ち。
と・・・幸せと感謝いっぱいの空間を引き裂くような大声がグリフィンの背後から。
グリフィンの肩越しに目をやると、ちょうど階段を上り終えた直後の人影が真っ白な
歯を剥きだして近寄ってきました。

「J、そいつは誰だ?」

その声をさえぎるように私の驚愕の雄叫び!

「わ〜〜〜お!カーティスフラー!」

あの偉大なトロンボーン奏者、グレイトカーティス!が目前に!
グリフィンがカーティスに返した言葉が怖かった。

「こいつ、俺の弟子だ。」

「キャあ〜〜〜〜!」

第三回 「テイク ジ ええ? シンカンセン」をお楽しみに!